プライベートで求められた看護行為
基礎疾患の状況などわからない中で浣腸を施行するのは不安です。
責任を伴うし･･･
浣腸は量にもよりますが、
脳圧が上がったり腸壁を破ってしまったりしたケースがある旨を教育されてきたので。
おじさんの話していた状況はひどく重篤で腸閉塞寸前なのかなっと思われるぐらいでしたが、
実際にお隣行くと玄関まで出てきてくれました。
「生まれて初めて2日便秘になってしまい、出そうだけど出なくて怖くなって怖くなって･･･」
それで91歳の腰が悪いお母さんが、
近所のおじさんにドラッグストアで浣腸を買ってきてほしいとお願いしに行き･･･
80歳のおじさんが夜8時前にドラッグストアまで原チャリで浣腸を買いに行き、
その帰りにウチに寄ったという流れだったことがわかりました。
症状や状況を聞くとそんなに緊急性が無いことがわかり、
自分で浣腸もやってみると言われ浣腸を1つ持ってトイレに行かれました。
「良かったー！自分で浣腸してくれるって言ってくれて。浣腸するのは簡単だけど、何か有ったら申し訳ないし。」
そう思うのと同時に、
ちょっと拍子抜けしました。
わざわざ私がしゃしゃり出る必要はなかったんじゃないかな？
って思わずにいられませんでした。
医療職だからわかること
子供が小学生の頃のママ友（フル勤務）が、
子供がちょっとでも咳したら直ぐに病院受診するという話をされた時、
「すごいね！私はいい加減だから･･･これぐらい大丈夫なはず！
ってあんまり病院受診しないかも。ヤバいママだよね～(笑)」
って言ったら。
「なすりんさんは看護師さんだから、どのぐらいまで大丈夫だけどここからは要注意ってわかるでしょ?
私にはそれがわからないから直ぐに病院に連れて行くしかないのよ。」
と話されたことを思い出しました。
そうか。そうだったんだ。
医療職じゃないから、緊急性が有るかどうかがわからなかったんだね。
今回の事もこのおじさんやMさんとそのお母様にとっては、
にっちもさっちも行かない大問題だったんだね。
それに気付かされ拍子抜けしたことが気恥ずかしくなりました。
歓喜
「ありがとうございます！！。すっきりしました！！」
満面の笑みでMさんがトイレから出てきました。
そう聞いておじさん・おじさんのお姉さん（82歳）と私は嬉しくなり拍手をしました。
そして良かった！！と4人で肩を抱き合って喜びました。
マスクをしているので目しか表情を見て取れませんでしたが
、間違いなく最高の笑顔でした。
おじさんのお姉さんがこう言いました。
「なすりんさん。有難うね。
やっぱり今まで経験しなかったことが起こると本当に不安になるでしょ。
だから道を歩くときにでもただ素通りするんじゃなく元気ですか？
とか声を掛けてね。それで安心するんだから。」
その時、私はとてもほっこりした気持ちになり嬉しくなりました。
そして、バリバリ働いている友達が持っているキラキラした輝きのかけらが
私の両手の中で小さく輝いているのを感じました。
意外な所に散りばめられている満足感
この小一時間、私は結局話を聞くだけで大したことはしていません。
それでも私を必要とし、こんなにも喜んでくれる人がいる･･･
私は10年ぶりに病棟勤務での感覚を味わうことが出来ました。
現在勤務中のレセプト等事務メインの外来看護師では
なかなか味わうことが出来ない感覚です。
今回の出来事に、私は看護師としての満足感を得ることが出来ました。
職業人として肩ひじ張らなくても
我が家が有る地域は40年前に造成された住宅街で、
その住人の高齢化が進んでいます。
後期高齢者の独居の方々が多い地域です。
高齢になると些細なことでもイレギュラーなことに遭遇したら心細くなるのでしょうね。
頼れる人が居ないとなお更なのでしょう。
今回もMさんを心配して
夜8時に80歳のおじさんがバイクでドラッグストアに行ってあげる優しさ。
このような面倒なお願いを互いに出来る関係に胸が熱くなりました。
自然な形で高齢者同士で支え合う、
この地域の方々は本当に素晴らしい関係を築き上げているなって感動しました。
職業人として肩ひじ張らなくても･･･
そこに私のニーズがある時に私の出来ることを支援することで、
こんなにも充実した時間を頂くことが出来るなんて。
バリバリ勤務している友達とは違う形ででも、私も役に立てるんだ･･･
そう自分自身を誇らしく思うことでした。
職業人として肩ひじ張らなくても･･･
置かれた場所でひっそりと咲いていたらいいのだと元気を頂けた出来事でした。
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